ソーシャル・サポート
社会には、さまざまな種類のサポートがあります。カウンセリングサービスやコーチングサービスだけではなく、身近な支えも社会的なサポートの役割を果たすことがあります。
ソーシャル・サポートの定義や種類、そして効果や活用する取り組みについて、ご紹介いたします。
ソーシャル・サポートとは
ソーシャル・サポート・ネットワークとは、日常生活上のニーズに対して支援を提供する人々のネットワークを指します。
その提供者には、家族、親族、友人、隣人、同僚、ボランティアなどインフォーマルなサポートと、フォーマルサポートを提供する公的機関や民間組織の支援者が含まれます。
学術的な定義としては、代表的なものに Cobb (1976) の定義「ソーシャル・サポートとは、個人にとって自分が愛され、ケアをうけ、相互の責務をともなったネットワークの一員であると感じさせる情報である」があります。
はじまりと今
1960年代のアメリカで、脱施設化のムーブメントから、退院した精神障害者の病状悪化や再発を引き起こすケースが社会問題となり、問題を抑止する研究が進められました。
調査の結果、ストレスフルなライフイベントの経験から、特にうつ病や統合失調症が発生・再発する傾向が顕著になりました。また、社会関係に恵まれていると、同様のライフイベントのストレスが緩和され、良好なメンタルヘルスが維持されるという傾向も明らかになりました。
その後、1974年に John Cassel が、はじめてソーシャル・サポートという概念を提唱します。
具体的には、対人関係に恵まれていることが、有害なライフイベ ントの影響を緩和し、良好なメンタルヘルスの維持を可能にすることを指摘して、対人関係の中でもたらされる個人にとって有益な要素をソーシャル・サポートと呼びました。
サポートの種類
ソーシャルサポートネットワークの種類は「道具的サポート」と「社会的・情緒的サポート」の2種類に分類できます。
さらに、細かい分類には以下のものがあります。
●「道具的サポート」の細分類
①「直接的サポート」
生活問題を解決するための、食べ物、お金、家事などの手伝いといった直接的に資源を提供する。
②「情報的サポート」
生活上の様々な問題に直面したとき、解決するための社会資源についての情報を提供する。
●「社会的・情緒的サポート」の細分類
③「情緒的サポート」
配偶者・同居人との離死別、長期にわたる失業など、ストレスを受けるライフイベントに遭遇した場合や、理解されにくい困り事を抱えていることから社会的に孤立しやすい状態の場合に、ストレスを軽減するような愛情や愛着、親密性のあるサポートを提供する。
④「認知的サポート」
自身の存在や能力、また自身がもつ役割の遂行に関して適切に評価されることで、自己肯定感を向上させたり、アイデンティティの獲得・維持を可能にする関わりを提供する。
サポートの効果
サポー卜には「ストレス緩衝効果(stress buffering efifect)」があります。
これは、ストレスがある場合、サポートに恵まれていれば、ストレスの有害な影響を緩和する効果によって、良好なメンタルヘルスが維持できることを意味します。
特に、社会的に孤立している方々は、上述の「情緒的サポート」の機会不足から、うつ病や心臓病などの健康問題を抱えやすいことが、J. S. House の2001年の研究からいわれています。また、Cohen and Wills の1985年の研究からも、情緒的サポートはストレスだけではなく、抑うつ感情、不安などを緩和する効果があるとされています。
日本における
ソーシャル・サポート
日本では、高齢者の孤独死が社会問題化した際に、ソーシャル・サポートの重要性が注目されました。現在でも、不登校児の支援や、少子化対策としての母子への支援で、ソーシャル・サポートの活用が進められています。
また、内閣府は孤独・孤立対策として「つながり」を重視した取り組みを行っています。この対策では、社会的不安に寄り添い、深刻化する社会的な孤独・孤立の問題について、多面的に議論がなされ、多くのNPO法人への聞き取りも数年に渡って繰り返し実施するなど、精力的に行われています。
今後、社会的孤立を解消するために、多様なソーシャル・サポートがさらに増えていくことが期待されます。