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​ブランディングの方法

​対人支援サービスのブランディング

SNSでは、サービス提供者そのものをインフルエンサーとしてブランディングするセルフブランディングがよく見受けられます。この類のブランディングと対人支援サービスにおけるブランディングとの違いは、対人支援サービスという利用者のプライバシーを安心して表現できる器と、その中で体験できるの価値を明確にし、そうしたサービス独自の特質を軸に、必要な方へ届くように訴求するところにあります。

そのため、提供者の人物像も、そのサービスの性質を活かせる提供者アイデンティティのイメージ(「しっかりしていそう」「安心感で包んでくれそう」など)となることが重要になります。

また、サービスは、物理的な商品とは異なって、無形の商品という特質があり、顧客と提供者が関わっている時の体験に、対価を払うメインの価値が発生します。対人支援はこの傾向がより強いため、ブランディングによって、イメージや約束できるベネフィットなどを伝わりやすくすることが求められます。

​01 ブランド・アイデンティティ

ブランド・アイデンティティとは、どのような存在であるかを表すもので、新しくブランドを構築する際には、サービス利用者や関係者からみたときに、どのような存在としてみられたいのかという理想を言語化したものを指します。そのブランドの目指すあり方が反映されたものという意味で「ブランド・ヴィジョン」とも呼ばれています。

このアイデンティティは、短いフレーズで表せるものではなく、ブランドの独自性を構成する4つ前後の中核的要素を軸に、その他のブランドを構築する重要な要素群で、表すことができます。

​02 ブランド・ミーニング

ブランド・ミーニングは、「ブランド・パフォーマンス」と「ブランド・イメージ」で構成されます。

■ブランド・パフォーマンス

「ブランド・パフォーマンス」とは、サービス体験が、機能面の顧客ニーズや期待を、どの程度満たすかということを意味します。

サービス利用者のニーズや期待を満たすサービスを設計して提供することは、マーケティングを成功させる必要条件となります。

ブランドのポジショニングは、以下のブランド・パフォーマンスに何らかの優位性があるかどうかにかかっています。

ブランド・パフォーマンスの5つの要素

①主要な要素とそれを補う特徴

②サービスの信頼性(パフォーマンスの一定であることや、提供の持続可能性)

③サービスの効果(消費者の求めるサービス要件をブランドがどれだけ満たしてるのか)、サービスの効率(段取りや迅速さ、対応のよさ)、サービスへの共感(サービス提供者が消費者からどれだけ信頼され、親切で、消費者の利益を考えていると思われているか)

④スタイルとデザイン

⑤価格

■ブランド・イメージ

ブランド・イメージは、利用される方の心理的ニーズや社会的ニーズを、どのような形で満たそうとしているかといった、サービスの付帯的な特性を表します。

ブランドが実際に何の役に立つのかではなく、抽象的にどう思われているかが、ブランド・イメージとなります。

次の3つの観点から、ブランドの無形の側面を、よく表現する連想を明確にします。

ブランド・イメージに結びつく3つの連想の要素。

1.利用者のプロフィール

「どのような人が、そのサービスを利用するのか」といった、想定される利用者が抱くイメージとしての、利用する人物像を表します。

具体的には、想定される利用者が抱くイメージとして、ブランドの実際の利用者や、憧れの利用者の人物像が挙げられます。

この人物像は、個人の特性よりも、集団的アイデンティティという観点で捉えます。

集団的アイデンティティを明確化する基礎は「記述的デモグラフィック要因」と「抽象的なサイコグラフィック要因」によって構成されます。

①「記述的デモグラフィック要因」は、サービスを、性別・年齢・職業・所得のカテゴリーを利用します。

②「抽象的なサイコグラフィック要因」は、人生・キャリア・財産・関心のあることなどが挙げられます。

2.利用シーン

どのような雰囲気の空間で、対人支援が行われるのかを表します。対面の場合、リラックスできる環境づくりに反映させる必要があります。オンラインサービスの場合、画面越しに感じられる人物の服装や部屋・背景などに反映させることが考えられます。

3.提供者アイデンティティと体験価値

想定される利用者が、対人支援サービスを提供する人物の望ましいイメージとして「このように接してくれるだろう」「このような人間性を感じられる」など、利用者に対する提供者の言動や振る舞いを、ここでは「提供者アイデンティティ」と名づけています。このアイデンティティには、利用者との関わりで、どのような存在として役に立ってくれるのかというブランド・パフォーマンスにも関係します。

このイメージは、たとえば以下の5つの価値観で表すことができます。

「誠実さ」:現実的、正直、健全、おおらか

「興奮」:大胆、元気、想像力に富む、現代的

「能力」:信頼できる、知的、成功している

「洗練」:上流階級、魅力的

「たくましさ」:アウトドア好き、タフさ

​03 ブランド・レスポンス

ここでは、サービスの利用を検討している方の反応を想定します。理性的な反応から生まれるものを「ブランド・ジャッジメント」、感性から生まれるものを「ブランド・フィーリング」と区別して捉えていきます。

「ブランド・ジャッジメント」

想定する利用者が、サービスの申込みや利用を決定する要因について検討します。「ブランド・パフォーマンス」と「ブランド・イメージ」についての多種多様な連想を組み合わせて、利用の決定要因が作られます。

さらに、利用の判断軸は、大きく4つのタイプに分けられます。

①ブランド品質

ブランドに対する利用者の全般的評価のこと。ブランド選択を左右する。品質・購入意図・期待度・独自性」で評価できる。

②ブランド信用

サービス提供者への評価で、能力があり、顧客のことを考え、純粋に魅力があるかなどで評価されます。

具体的には以下の3つの評価のされ方があります。

ブランドの専門性:有能さがあり、革新的で、その業界のリーダーとなっているか?

ブランドの信頼性:信頼に足り、利用者の利益を念頭に置いているのか?

ブランドの魅力:楽しさや面白さなど、何らかの魅力的な要素があり、そこに利用者が時間を費やすだけの価値があるか?

 

③ブランド考慮

想定される利用者が、ブランドにどれだけ個人的な関心を持ってくれるかを意味します。

このブランド考慮は、ブランド・イメージの一部として、どれだけ強く好ましくブランド連想が確立されるかに影響します。

 

④ブランド優位性

想定される利用者が、ブランドを他にない利点を持っていると、考えてくれることを指します。

ブランドと利用者との間に、強固で活発なリレーションシップを築くうえで、ブランド優位性はきわめて重要になります。

独自性のあるブランド連想を、どこまでブランド・イメージとして形成できるかが鍵になってきます。

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